京つう

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2012年08月04日

再び芽吹く杉苔

あれは確か10年ほど前のことでした。


その頃はまだ、こんなに良い庭なんだから沢山の人に来て貰ってもっと知って貰いたい・・などという若い事を考えていました。
あの時の自分は知らなかったのです。人というのは自分の目線に存在する物以外はさほど気にしていない、と云う事を。



そして愚かしい手段に出てしまいました。
メディアによる庭園の宣伝です。その結果、開けてから閉館までおそろしく沢山の人が来ました。
その時は素直に喜んでいました。なんせ普段はあまり人が来ないことが常態化していましたから、いきなり桁が3つも上がれば若い自分は喜んでしまうでしょう。

「よし、これで建物や庭の一部を修復できるかもしれない」なんて思っていたのかもしれません。




そして、一通りの嵐のような数カ月が過ぎて久しぶりに庭をゆっくりと見回った時に・・異変に気づきました。


あれだけ苔むしていた庭が・・まるで荒地のようになっている・・?

それだけではない、茶室の障子もあちらこちら破れているし、綺麗に整列していた羅漢さんがチグハグになっている。
最初は理由があまり分かりませんでした。なので頻繁に観察しに庭に赴くとすぐにその理由が解りました。


苔は遠慮なく踏みにじられ、障子は外から無理やり開けるのに指で破られ、羅漢さんはなんと踏み台がわりにされていたのです。
もちろん彼らの手にはカメラがありました。それ以来、カメラを持った人間の良識には一切期待をしなくなりました。

それ以外の人々も、人目がなければ好きに振る舞う傾向がよく見られることから現在考えているの「公開制限」の方向へ進むハラが決まりました。何も理由なく独占したい訳ではなく、庭を保全するための最低限の防御策としての対応なのです。



・・と、過去の話はここまでとして、それ以来通行制限を敷いて手入れを続けてきた場所にようやく杉苔が戻って来ました。








他にも数カ所、踏み荒らされ荒廃した場所に杉苔のコロニーが戻りつつあります。
この場所は紅葉の盛りの頃に集団で撮影が行われた結果、杉苔の山がわずか半月あまりで消滅した場所です。
回復までに10年。それに費やした労力は計り知れません。


これから公開制限を設け、人の入る時期や範囲を狭めていくにつれて苔はその勢力を増していくことでしょう。
苔一つ生えない庭、柵だらけの迷路のような庭の景色を誰が求めているのか?
求めているのは美しく苔むした輝くような庭の景色ではないのか?



まだ少しばかりの時間はかかりますが、その状況を迎えないことには実際にその景色を見ることが出来ないわけですから、公開制限の是非はまた10年経ってから聞くことにしましょう。

きっと訪れた全ての人が幸せな気分になれるような、そんな庭が10年後には再び現れているはずです。




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Posted by ハシモトシンジ at 23:28│Comments(0)【勤務日誌】
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